一年を通して多くのアングラーを集める東京湾のタチウオジギング。人気のワケは意外なほど繊細で奥深いそのゲーム性にある。身近ながらも通い込むほどに発見がある人気ターゲットを東京湾屈指の人気船の助手であり、アングラーとしても活躍する佐野代吉さんが完全解説します!
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この記事を作った人佐野代吉
1歳の頃に初めて釣りして小学1年生から本格的に釣りを始める。
横浜を拠点に川、湖、用水路と幅広い釣りを楽しむ。
週末は本牧新山下の渡辺釣船店(http://blog.watanabetsuribuneten.com/)で中乗りとして乗船。現在はタチウオジギングを中心に日々釣りをしているアングラー。
Blue Blueテスター、DAIWA SFA(スーパーフレッシュアングラー)。
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佐野代吉さんは高校生でタチウオジギングに魅了され本牧新山下の渡辺釣船店に通い始める。現在は週末に渡辺釣船店で助手を務めたり、タチウオジギングを楽しんでいる。年間の釣行回数はタチウオジギングを中心に100日以上。
東京湾のタチウオジギングとは? 船宿やポイントなどの全体像
東京湾ではタチウオジギングを1年を通して楽しむことができる。タチウオジギングは季節に応じたポイントや釣り方が存在するとてもゲーム性のある釣りでもある。メインポイントとしては季節にもよるが走水沖、観音崎沖、猿島沖の3つが有名。これらのポイントには1年を通してもタチウオが留まる。ジギング、エサ釣りをまじえてタチウオ船団(船が密集するポイント)が形成され、多い時には50隻近くの大船団が出来ることもある。

走水沖、観音崎沖、猿島沖の3カ所が東京湾を代表する定番ポイント。これら以外にも東京湾には多くのポイントが点在している。
走水沖のポイントの特徴としては水深が約50〜70m。急な落ち込みやカケアガリなどの起伏のある所で、大潮時にはラインが横に走って行くほど非常に潮の流れが効くポイントでもある。猿島沖は水深40〜60mに根が所々に点在するポイント。観音崎沖は少し深場で水深は約60〜80m。潮の流れも3つのポイントの中では1番速くなることが多い、テクニカルな場所でもある。
浅場では富津沖や木更津沖などが有名なポイント。水深15〜30mが中心でベイトタックルでキャストをして広く探る釣り方や神奈川県側のポイントとは異なる、フラットなロケーションでの釣りが展開される。
東京湾のタチウオジギング船の出船時刻は出港場所にもよって多少異なるが、6時半〜7時に出船。沖上がりは早い所で13時半。またポイントが近い場合には14時過ぎまでやる場合もある。

東京湾名物のタチウオ船団。エサ釣り、ジギングと入り乱れて、ときには50隻近い船が集結することも珍しくない。
東京湾のタチウオジギングタックル
東京湾のタチウオジギングではタックルバランスが非常に大事になってくる。自分は軟らかいロッドを中心としたセットと、張りのある、少し硬めのロッドを中心としたセット、計2セットを必ず持参している。

佐野さんは硬軟のロッドを用意、合わせて2タックルを持参して楽しんでいる。
東京湾タチウオ用ジギングロッドとは
ロッドに関しては現在はソフトな優しい誘いが主流になっているため、軟らかいロッドを使うことが多い。ジギングの一般的なジグを跳ねさせるアクションとは異なり、いかにジグをばたつかせずただ単に上下のアクションを加えられるかが釣果の分かれ目となるからだ。
理想としては60〜150gまでのジグ背負える軟らかいロッド1本と90〜180gまで背負える、しっかりジグを動かして誘いたいときに使用する張りのあるロッドが1本あるとさまざまな状況に対応できる。

使用するジグウエイト、タイプ、狙いのアクションやポイントの水深などによってタックルを使い分けるのが佐野流。
胴調子で軟らかいロッドは自分の誘いたい様にジグをコントロールすることができる。ティップが綺麗に入り込み、細かいアタリもしっかり喰い込ませることができる東京湾タチウオジギング専用ロッド(ブルーブルー BLACKKNUCKLE Light Sensitive660)を使用している。
張りのある少し硬めのロッドは、タチウオジギングにしては比較的短いモノ(ダイワ 鏡牙AIR 58B)を愛用している。その短さから圧倒的な操作性があり、全体的に張りがあり、硬めなので水深が深いポイント、かつ潮の流れが速いときにしっかりジグを動かしてアピールしたいときに活躍する。
◎佐野さん使用ロッド
東京湾タチウオジギング用リール
リールは好みにもよるがダイワ製なら100〜200番、シマノ製であれば200〜300番がサイズの目安。ハンドル1回転で55〜80cmくらいのスピードのモデルを使うのがベスト。
自分自身が軟らかいロッドにセットするリールはローギアでハンドル1回転54cm、タナを細かく誘って行くことができるもの(ダイワ ソルティガ IC 100P-DH)を組み合わせている。張りのある少し硬めのロッドにセットするリールはこちらもハンドル1回転57cmのローギアタイプ、ダイワ リョウガ1016-CCを使っている。

タチウオジギングではハイギア、ローギアともに活躍するが、佐野さんの好みはローギアタイプだ。
タチウオジギングではダブルハンドルとシングルハンドルを使い分けたり、リールのギア比(ローギアとハイギア)で誘い方を変えたりすることもテクニックのひとつ。一般的な使い分けの基準としては、細かく優しく誘い上げたいときはダブルハンドルのローギア、通常の滑らかな誘いをしたいときにはシングルハンドルのハイギアが有効。
◎佐野さん使用リール
メインラインはPE0.8号、リーダーは40lb直結か30lb+70lb
東京湾ではメインラインはPE0.8号が主流。0.6号だと他の釣り人とラインが絡まった際に傷付くことがあり、ラインブレイクが起こりやすくなる。逆に1号ではラインブレイクのリスクは減るが、潮の流れが速いときにラインだけが流されてジグがうまく動かせなかったり、ジグの動きを感じにくくなってしまったりして使いにくい。
リーダーに関しては使い手によって細いものを好む人、太いものを好む人で意見が分かれる。自分のセッティングはメインリーダー40lbを3mセットする場合とメインリーダー30lbを3m、その先に70lb(バイトリーダー)をつける2つの方法がある。

バイトリーダーをセットする目安はリーダーに傷が入るか否か。臨機応変に使い分けていく。
使い分けの基準としてはフォール中にアタリが多く、リーダーに傷がよく入る場合やタチウオがジグのヘッド部分を狙って食ってくる場合にはバイトリーダーをいれる。これによりラインブレイクを減らすことができる。釣りをしていてまったくリーダーに傷が入らない場合にはメインリーダー40lbのみで構成するのもよし、だ。
◎佐野さん使用PEライン&リーダー
東京湾タチウオジギングでは欠かせないタングステン製ジグ
東京湾ではさまざまなタチウオジギング用ジグが使用されているが、ここ数年で必要不可欠な存在となったのが”タングステン(TG)素材のジグ”である。ひと昔前の東京湾では鉛素材のジグが主流だったが、現在ではTG素材のジグが主流といってもよい。鉛素材、TG素材のジグをどちらも常備しておくのが理想的であり釣果を伸ばすための条件でもある。

東京湾ではタングステン製ジグは定番となっている。それでも鉛製に軍配が上がるときもある。両素材のジグを用意、ウエイト、カラーも豊富に揃えておきたい。
ジグは重心の位置でアクションが異なるため、センターバランス(重心がジグの中心)とリアバランス(重心がジグの下の方)のジグどちらも用意することが大切。
カラーは船宿のホームページやSNSなどをチェックし揃えておく的。人気なのはシルバー系、ゴールド系、単色系、の3種類(ブルピン、アカキン、ピンクは定番)。これらのカラーはタチウオジギングに最も貢献する、絶対に揃えておいた方がいいカラーだ。
ウエイトは船のレギュレーションにもよるが、どんな場所にも対応できるよう80〜120gをメインに、150gを最低1、2個は用意しておくことが理想だ。
◎佐野さん愛用ジグ
前後にトリプルフックをセットするのが東京湾スタイル
肝心なフックセッティングはタチウオジギング用のトリプル(トレブル)、クワトロフックを前後にセットするスタイルがおすすめ。東京湾ではどの船宿でもバーブレス(返しのない針)フックをおすすめしている。アシストとリアのフック同士をセンターゾーンまで届かせても、互いが絡まないバランスが大切。

前後にトリプル、またはフォース、クワトロフックをセットするのが東京湾スタイル。
フックサイズはジグの大きさに合わせる。たとえば、60〜80gのジグではSS〜S、100〜150gではS〜Mサイズのフックをセットするのが目安となる。自分が使っているアンチョビフックを基準と考えるとこれがベストだ。
◎佐野さん使用フック
東京湾タチウオジギングの実釣で注意したいポイント
落として巻き上げるだけのタチウオジギングだが、実際には注意したいことも数多い。より多くのタチウオを手にするためのポイントをチェックしていこう。
指示ダナや誘い上げてくる高さなど、船長の指示に従うのが鉄則
東京湾では船の流し方は大きく3つに分けることができる。
潮に合わせながら流す場合、ドテラ流しにする場合、その場に留める場合の3つだ。深場のポイントではだいたい留めるか潮に合わせて流すかの2パターンとなる。浅場になるとここにドテラ流しが加わる。

流し替えや移動中にジグチェンジやタックルチェックを行っておく。船長の合図と同時に投入できる体制を整えておくことが大切だ。
船がポイント周辺に着くと船長があらかじめその日使うジグのウエイトをグラム数でアナウンスして伝えてくれるので、それに従って準備する。タチウオの群れやベイトの反応を見つけ、船長が投入の合図とともに水深、タチウオのタナ、誘い上げてくる高さの3つを教えてくれることが多い。その条件の中でどんなジグを使い、どのタナでどんな誘い方が釣れるのかをひとつずつ探し、当てはめて行く。ひとつのポイント周辺で粘る日もあればポイントを転々とする日もあるため、その場その場に応じた釣り方を探し当てていく。
たとえば、船長が「水深60m。(タチウオの)反応は底から10m。底から15m誘い上げてください」と言った場合は、その指示にしっかり沿って何度も底から15m誘っては落とす、と繰り返すことがヒットを得る1番の近道。まずは船長の指示を守ること、これが重要。
基本的な誘い方はワンピッチジャーク
タチウオジギングの基本的な誘い方は「ワンピッチジャーク」。ただし、タチウオジギングでは青物狙いのワンピッチと異なり、ジグを跳ねさせるというより上下に動かすだけの誘いが効果的。そのため優しく誘うことが重要になってくる。

佐野さんおすすめのアクションパターンはリールのハンドルを上から下に回すときに力を入れるリールジャーク。周年使える鉄板パターンだ。
おすすめの誘い方はハンドルを回転させるとき、上から下に回す際に力を込めるとハンドルの回るスピードでロッドティップが軽く下がり、上下に幅を出すような誘いを自然に作ることができる。ロッドを意識して動かすことなく、リールの巻きだけで自然な誘いを演出できる。初心者から上級者まで使える誘い方で、一年中使える万能性もあるため出来るようになっておいて損は絶対にない、おすすめの誘い方だ。
朝は速めのスピードで釣っていくのがおすすめ
朝のうちは速めの誘いでやる気のある個体を反応させて釣って行くのがおすすめ。ヒットしたタチウオ以外のタチウオにもやる気スイッチが入って、喰いが立ちやすくなる。何をしたらいいかわからないとき、とりあえず朝は速い誘いでタチウオにジグを追わせて釣る方法が理想だ。

余計なロッドアクションを避け、リールの巻きだけでジグをスイミングさせるために、ロッドをまっすぐ下に構えることもある。
朝、スローな誘いをおすすめしないのは、朝のうちはタチウオもフレッシュな状態でいるため、スローな誘いで釣ろうとすると、スピード感が合わなくて見切られたり丸呑みされて切られる可能性があるからだ。速い誘いの方がタチウオも食べなきゃ逃げられる、という闘争心でしっかりジグを喰いに来る可能性が高いと考えている。速い誘いに反応がなければ徐々にスピードを落とし、スローな誘いにシフトチェンジするのもひとつのやり方だ。
一定のリズムで釣ることを基本にする。フォール時はサミングも必須テクニック
タチウオは一定の連続した動きに好反応を示すことが多い。一定のリズムで誘うことは、タチウオジギングの絶対条件でもある。
そのためにもしっかり目線をロッドやリールに送り、釣っているときは集中することが大事だ。また、タナまで誘い上げてまた落とし込む際、親指をスプール(ラインが出て行くところ)に軽く置いてテンションをかけながら落として行くこともおすすめ。いわゆるサミングだ。
潮の流れでラインが横になったりする場合も少し強めにラインを抑えたり、たまに落とし込むのを1秒〜2秒止めるとラインが縦に戻って行く。この作業で余分な糸フケを抑えることが可能。結果的に確実なタナ取りや周りの釣り人とのオマツリを避けることにもつながる。
アタリがあったら即アワセ! 少し緩めのドラグセッティングで闘う
アタリが出たら即アワセでフックを貫通させることを狙う。アワセが遅れるとラインブレイクの原因にもなる。とくにフォール中のアタリには注意が必要だ。ロッドで行うアワセは時計でいうと4時〜1時ぐらいのイメージの振り幅で、素早くアワせるとよい。

佐野さんは即アワセ派。しっかりロッドを振り、素早くアワせていく。
タチウオはアワせた直後、掛かった瞬間の引きが強烈なためドラグは少し緩め(自分の5割の力で引っ張った時に出て行くレベル)にセットしておき、ファイト中に緩いなと感じたら、そこから少しずつ強めていくのがおすすめ。
上げてくるときは強引には上げず魚の動きに合わせて巻いてスピードを調節、ロッドは煽らずに、同じ角度であげてくるほうがハズれにくい。
ランディングは抜き上げとリーダーを持って行うパターンの2つ
魚が水面まで上がって来てからの対応も重要。
タチウオを船に入れるまでには2つの方法がある。1つは手でショックリーダーを持って抜き上げる方法。もう1つはラインをタチウオに対して出来るだけ巻き込み、ロッドで船内に抜き上げる方法。

せっかく手元まで寄せたのにランディングでバラしてしまってはもったいない。しっかり船内に取り込むためのコツをマスターしよう。
釣り人それぞれでやりやすい方で構わないが、個人的には後者のロッドで抜き上げる方法をおすすめする。理由は手で抜き上げる場合、多少のたるみが発生することがあり、返しのないフックでは外れるときがあること。また、抜き上げ最中にジグが外れ手にフックが刺さる危険性もある。
ロッドで抜き上げるときにはしっかりラインをタチウオから最低80cm以内まで巻き取ってから抜き上げる。このやり方であればフックが外れてジグがどこかに飛んでいく心配がなく、ラインもたるむことなく抜き上げることが可能。ただし、抜き上げて船内に魚が入った際には、すぐにリールのクラッチを切ってラインを出してあげないとロッドが折れてしまうことがある。また周囲の安全も確認が必要。この2点だけは注意してほしい。
釣れないときは上手な人の真似をする。SNS活用もおすすめ
他の乗船者は釣れているのに、自分だけが釣れないときは釣れている人のジグの形やカラー、誘い方を見て真似してみることが釣るためのひとつの方法。
タチウオジギングではジグの種類やカラーも大事だが1番重要になるのはやはり誘い方。釣れている人と同じジグ、同じカラーを使っていても同じように釣れるわけではない。釣れている人が、どんなタックルを使って、ロッドをどう持っていて、どんなロッドの角度でどのぐらいの振り幅で誘っているかなどを細かく観察することが大切。直接会話して意見を聞くことが出来れば自身の釣果を伸ばす秘訣にもなる。

ジグのタイプやカラーを合わせるだけでヒットが得られる場合もあるが、アクションパターンがより重要となることも多い。異なるタックルで同じアクションを演出するには相応の知識とテクニックが必要だ。
現在ではSNSが発達し、釣りが上手くなるための情報が沢山転がっているので、釣行前日などにあらかじめYouTubeで誘い方を調べて見たり、SNSでどんなカラーが釣れているのかをリサーチしておくことがさらに釣果を伸ばすためにも効果的だ。
タックル以外にも用意しておきたい4つのアイテム
タチウオジギングにおいてロッド、リール、ジグ、ライン、などのタックルが重要、とお伝えしたが、釣りを成立させる、という面では他にも揃えておきたいアイテムがいくつかある。
それは、スプリットリングプライヤー、ハサミ、フックリムーバー、フィッシュホルダー、の4つ。
スプリットリングプライヤーはジグを交換する際、スプリットリングを開け閉めするために必ず使用するアイテム。
ハサミはオマツリなどにスムーズに対処するときや血抜きの際にも活躍する。
フックリムーバーは、小さなタチウオが釣れた際、触れることなく外すことの出来る、釣り人にも魚にも優しい道具。
フィッシュホルダーも絶対に必要なアイテム。タチウオには鋭い歯がいくつもあり噛まれたら出血は免れない。酷い時は病院に行くほどの怪我につながるため、ハサミ型の魚を掴む道具、フィッシュホルダーはマストアイム。
以上の4点は必ず役に立つアイテムで持っておいて損はない。
まとめ 東京湾タチウオジギングの奥深い世界に踏み込もう!
東京湾のタチウオジギングは季節ごとの釣りを楽しむことの出来る最高のゲームフィッシュ。一見すると、ただ優しく誘っているようにしか見えないかもしれないが、やって見るとリールの回転速度や強弱の付け方でアタリの出方が変わったりもする。
意外なほど奥が深くもあり、釣り方もさまざまあり、これをやっていれば釣れる、という正解はない釣りでもある。そんな中、道具とともに釣り方も進化、自分ならではの釣り方を見つけるのが楽しみという方や、とにかくいっぱい釣って楽しむ釣り方も出来るのがタチウオジギングの魅力。ぜひ一度、その奥深いタチウオジギングの世界に踏み込んでみてはいかがだろうか?
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