最強釣法!? エビングによる相模湾キハダ釣りの基本

タイラバetc

相模湾ではキハダを釣るための最強釣法としての呼び声も高いエビング。キャスティング、ジギングでは結果が出なくてもエビングなら、という状況も多い。エビング伝道師として活躍するダイワフィールドテスターの栗山佳尚さんが基本釣法のすべてを解説する。

この記事を書いた人栗山佳尚(くりやま・よしひさ) ジギングからキャスティングまでオフショア全般を幅広くマスター。ルアー船の船長経験を生かした、複眼的な見方でフィールドを捉える名手。相模湾のエビングでは実力、実績ともに群を抜く。ダイワフィールドテスター。

相模湾ではコマセ船と同船して楽しむのが最もポピュラー。この場合、ミヨシ部分がエビングアングラーに解放されることが多い。

相模湾ではコマセ釣りの乗合船に同乗して楽しむのがおすすめ

相模湾において、エビングはジギングやキャスティングを含めたルアーフィッシングのカテゴリーで、キハダキャッチのための最短距離の釣り方だと思っている。レンジ、スピード、ハリスの太さなどの要素をいろいろ変えることで結果に差が出る、ゲーム性が高いところも魅力だ。エビングに限らず、相模湾で最も確率が高いキハダのサイズは20キロクラス。もちろん30キロ、40キロは珍しくはないし、80キロクラスまでは十分に可能性があると考えている。

相模湾にキハダが回遊してくればシーズンインとなる。エビング専用船や仕立で出船できれば6月、7月でもチャンスはあるが、専門船はとても少なく、船を仕立てての出船もハードルが高い。乗合船を利用するのが一般的だ。自分自身、乗合船を利用する一般的なアングラーと同じスタイルで楽しんでいる。キャスティング船で行うことも可能だが、コマセ釣りの船に同船するのがおすすめ。釣るためにコマセが必要なわけではないが、キャスティングとは釣りのリズムが異なるから。投入して指示ダナまで落としたら即回収、となってしまうことが多く、ヒットチャンスは遠のいてしまう。

魚探やソナーに映るキハダの反応を求めて集結したコマセ船団。こうした状況でもエビングなら勝機は十分にある。

乗合船で楽しむエビングは8月から9月中旬がハイシーズン

乗合船でエビングを楽しむ場合、現実的なシーズンスタートは相模湾でコマセ釣りが解禁される8月1日からとなる。通常は9月中旬くらいまでがハイシーズン。長くとも11月初旬までがオンシーズンの目安となる。トップシーズンは初期にあたる8月、9月。後期になればなるほど難しくなるというのが一般的なイメージだ。キハダがコマセを完全に学習する以前の8月上旬は、エサ釣りの釣果をしのぐほどの威力を発揮することもある。

キハダが湾内に入ってきているけれど水面には出ないようなとき。イワシなどのベイトを追い、止まらずに群れで泳いでいるキハダを、ソナーで追いかけたり待ち伏せしたりするような釣り方の場合、エビングはとくに効果的な釣法となることが多い。近年の傾向としてカツオの回遊の多少によって、狙うレンジの深さやキハダの喰いの良し悪しが大きく影響されるように感じている。キハダ単体の群れを追ってのアプローチよりカツオまじりの群れの方が狙いやすいし、カツオの群れの規模の大小が状況判断のバロメーターになったりもする。

前半戦にあたる8月、9月は水面から20~40メートル、後半戦はやや深く50~60メートルを釣ることが多くなる。カツオが多い状況でのシーズン初期は浅いレンジに注目したい。20メートルぐらいでキハダがヒットすることは珍しくない。8月中旬くらいまでは浅ダナと深ダナ、二極化することも多いのも特徴。水深70メートルくらいからキハダが一気に浅いレンジに上がってくることもあり、そうしたときはヒット率も高い。後半戦になるとキハダの警戒心が強くなるためか、圧倒的にコマセ釣りが強くなるのが通例。ハリスを長くして自然に漂わせたり、指示ダナで動かさずに放っておいたりするなどパターン、さまざまな工夫も必要になってくる。

身近な印象が強いエビングだが相手はマグロ、キハダだ。十分にビッグゲームと言える相手だけにタックルは相応のパワーを備えたものを用意したい。

相手はキハダ。タックルは専用タイプなど強度に優れたものがおすすめ

エビングは誰でも気軽に挑戦できる反面、相手は大型魚キハダとなる。20キロ、30キロ、それ以上のサイズの可能性もある。十分に戦えるよう、タックルを万全にしておくことが第一となる。

基本はスピニングタックル。使用するジグのメインウェイト、200~250グラムを考慮し、長さはジギング併用の場合は6フィート台、キャスティングにも対応したい場合は7~8フィート台の長めのロッドを使うのがおすすめだ。流用でも十分に楽しめるが、本気で挑むなら専用ロッドの選択が間違いない。ショートロッドにするか、ロングロッドにするかは好みもあるが、乗船する船や釣り座の違いによりセレクト基準も変わる。両方用意できれば完璧だ。

リールは8000番、10000番のスピニングリールを選択する。相手がキハダであることを考慮し、できるだけ高性能なソルト仕様のモデルを選択すると安心だ。ラインはPE4号&60ポンドリーダーというシステムと、PE5号&60~80ポンドリーダーがというシステムを使い分けている。リーダーの素材はフロロカーボンを基本に長さは3メートルを標準としている。

通常のジギングなどにくらべ、パーツ類が増えるのがエビングの特徴。各部の役割をしっかり理解して使いこなしたい。

リグ(仕掛け)はテンビン、ジグ、ハリス、フック、ワームで構成

エビングのリグ(仕掛け)は、ジギングに比較すると少し複雑だ。リーダーの先端にメタルジグを装着したテンビンを結節。リーダーとは反対側のテンビンの先にハリスをセット。先端に1本のフックを結び、これにワームを装着するのが基本形だ。

テンビンはエビング専用テンビンを使うのがおすすめ。市販のほとんどのものがエサ釣りを前提に作られているが、エビングでの操作性に劣るし、キハダ相手には強度不足のものも多く、手痛い失敗につながりかねない。専用テンビンの使用が安心だ。専用テンビンはストレート形状で水中抵抗が少ないため、ジグ単体でジャークしているかのような快適な使用感が魅力。ジグが絡みにくく、かつ回転しないように設計されており、ストレスなく釣りを楽しめる。

「エビングキハダセット」なるコンプリート仕掛けも入手できる。ここから入門するのは間違いない選択だ。

テンビンに装着するジグは、いくつかを使い分けている。フォールスピードが速く、引き抵抗が少ない形状のものがおすすめで、ロッドワークで動かすタイプのシンプルなものが使いやすい。メインウェイトは200~250グラム。レンジが浅いときに200グラム、レンジが深いときや速く沈めたいとき、ハリスを張りたいときなどは250グラムを使う。60~70メートルを釣る場合には300グラム前後のジグを使用することもあるので、何本か用意しておくことをおすすめする。カラーにはこだわっていない。

ジグは沈みの速い、シンプルな形状のものが使いやすい。テンビンはあらゆる面で専用のものが使いやすく信頼できる。

ハリスはフロロカーボン製の20~24号を、2回手繰ってちょうどよい長さ、約3メートルにセットする。ハリスに巻き癖が付いていると喰いが落ちる傾向があるのでしっかり癖を取っておくことが大切だ。フックはムツサークルフックの2/0をメインに使用。潮流が速いときは3/0を使うこともある。フックセレクトはとても重要。ネムリ形状のフックでなければハリス切れを起こしやすいので要注意だ。

選択肢は少ないが、ワームは専用タイプが使いやすく、釣果アップにも大きく貢献する。

ワームは3.5~4.2インチを2つセットするのが基本

ワームは3.5~4.2インチ程度の長さのものを目安にセレクトする。どんなタイプでも使用は可能だが、実績が高いのはエビング専用のワームだ。高強度、高硬度素材を採用しているのが専用ワームの最大の特徴。耐久性が高くフックに刺しても千切れにくいため、チャンスを逃さず手返しもアップ。結果として釣果に結び付く。ワームはチョン掛けで使用する。深く刺し過ぎるのは厳禁。深く刺しすぎるとワームが沈んでいく間にクルクル回ってしまって、絡んでしまう原因になる。ハリスにクセがついてしまうので喰いも悪くなる。

意外に重要度が高いワームのフックセッティング。1つか2つ、回転しないようにチョン掛けにするのが基本だ。

ワームは1つか2つをフックにセットする。潮の馴染みがよく回転しにくいので、2つセットするのを基本としている。ワームの数やサイズによってボリューム感が変わるだけでなく、1つではシンキング、2つではスローシンキング、またはサスペンド状態を演出できるため、キハダの反応を見て変えていくのも一手。同じワームを2つ掛けてもよいし、異なるカラー、サイズを組み合わせてもよい。カラーはケイムラが定番で、初期は小魚チックなカラーを意識してクリアブルーを選ぶことも多い。

釣り座はミヨシ。その下にはズラリとコマセ釣り師が並ぶ。オマツリしないよう、常にコマセ釣り師のラインの入り方、向きに注意したい。

ハリスが絡んだら喰ってこない。絡み防止の小さな工夫が大切

乗合船を利用し、相模湾でエビングを楽しむ場合、釣り座はミヨシ部分となるのが基本だ。腰前後の高さの手すりがある、海面まで高さがある、上下動が他の釣り座に比べて激しいなど、ミヨシ部分の特徴を踏まえたうえで釣り方を考えていくことが大切だ。

投入は船から少し離すように、アンダーハンドで軽くキャストするのが基本。着水する直前に強めにフェザーリングしてラインの放出を止める。これはテンビンを使用するエビングならではのコツ。ラインの放出を止めると着水するときにジグとワームが離れ、フォール中にハリスがメインラインに絡むトラブルを軽減できる。

攻めるレンジ(タナ)は、コマセの釣り人への指示が基本となる。例外もあるが、シーズン初期(8~9月)は水面下20~40メートル、後期(10~11月)は50~60メートルの間で船長から指示が出されることが多い。これを目安に、エビングの場合は、その下の10~20メートルをスタートに、上へ上へと探り上げてくるのが基本パターンとなる。狙いのレンジまで落としたら、ハリスが潮に馴染むまで少し待ってからジャークへと移る。この動作を行うことでハリスがテンビンに絡むことを防止できる。

グリップエンドをギンバルに当てての、通称「ギンバルジャーク」が基本となる。

仕掛けをまっすぐ張るというイメージでロッドを振る

ロッドワークはシンプルでOK。ギンバルにグリップエンドを当ててのギンバルジャークを基本としている。ロッドで大きく、または小さくシャクってから、シャクって出た分の糸フケを取るシャクリ方だ。ほとんどの場合、このシャクリ方で通している。疲労も少ないのでおすすめだ。ときおりショートロッドを使って細かくチョコチョコとジャークしたりすることもある。この場合は脇挟みジャークで対応している。

ジグを操作する、というよりは仕掛けをまっすぐ張るというイメージでロッドを振っている。ワンピッチのストローク幅は潮の状況によって変えるが、それはワーム自体を動かそうとしているのではない。ハリスが3メートルあるので、直線的な移動は可能でもワーム自体にトリッキーな動きは期待できない。目の前でちょっとでも動いてくれればキハダは喰ってくると考えているので、ハリスがピンっと張っている状態にする、というのがひとつのキーワードだ。

独特なフッキングから始まるキハダとのファイト。根ズレの心配はない。力を入れ過ぎることなく、しっかりロッドを立てて支え、曲げ込んでファイトする。

エビングに特有なフッキング、ランディング動作をマスターする

フッキングにはコツがある。違和感を覚えたら、まず瞬時にリールを巻いてラインを張ることが重要。投入や落とし直しのフォールでもヒットするため、何か違和感を覚えたらリールを素早く巻き、ラインを張って即座にアワセを入れる。その後もラインを巻き続け、キハダが走ってドラグが滑り、ラインが引き出されるまで何度も繰り返しアワセを入れることが大切。飲み込まれたフックをしっかり口の端まで引きずり出して掛けないと、歯でラインブレイクしてしまう。ネムリ形状のフックでなければこの動作が出来ないのでラインブレイクしやすい。口の奥でフッキングしてしまうため、ハリスが歯でこすれてしまうためだ。

ファイトに関してはジギングと同様でOK。エビングだからといって変わるところはない。数回は走られることを覚悟し、相手が走るときはラインを出して耐え、止まったら巻けるだけ巻く、寄せられるだけ寄せてくる、という動作を繰りかえして寄せてくる。ドラグの初期設定は4キロを目安にしている。ファイト中は、ドラグセッティングを変えることはあまりない。4キロのセッティングでラインが出され過ぎるときはハンドドラグを併用してプレッシャーを掛けている。 自分自身、パワーファイターではないので、時間をかけてゆっくりやり取りを楽しむようにしている。しっかりロッドを立て、反発力を使ってファイトを展開すれば、それほど力を使わなくてもキハダを寄せてくることは可能だ。

エビングでのランディングは少し独特だ。ランディングしてくれる人にテンビンを掴んでもらうことを考えることが大切だ。

仕掛けにテンビンとハリスが存在するエビングでは、ランディング時に特別な配慮が必要となる。船縁までキハダを寄せたら、ロッドで操作し玉網に入れてくれる船長や助手の方などにジグ、テンビンを掴んでもらう。その後はハリスを手繰って玉網に誘導してもらう、という流れになる。このランディング動作が基本になるため、あまりに細いハリスではキハダを寄せることができない。喰い渋っても一定程度の太さのハリスは必要だ。慣れない方はあらかじめランディングの手順を確認しておいたほうがよい。最後の瞬間まで気を抜かないことが確実なキャッチへの重要ポイントだ。


【栗山佳尚さんの相模湾エビングタックル】
ロッド&リール;ダイワ/ソルティガEBING74HS&ソルティガ、セルテートSW10000-P&H、ソルティガEBING62HS&ソルティガ、セルテートSW8000-P
メインライン:ダイワ/UVFソルティガセンサー 12ブレイドEX+Si 4号、5号
リーダー:ダイワ/ソルティガリーダーTypeF 60ポンド(メインライン4号)、80~100ポンド(メインライン5号)
テンビン:セイカイコレクション/エビング専用直線テンビン
ジグ:セイカイコレクション/ムラジグV2、MMジグⅡ 200グラム、250グラム。ダイワ/ソルティガTGベイトロジー260、330グラム
ハリス:フロロカーボン24号
フック:ムツサークル2/0、3/0
ワーム:エビングスティックスーパーハード&ノーマルの3.5、4.2インチ、DRスティック3.5インチ、快適リアルオキアミワームLL、3L。すべてダイワ製。


●参考動画 正海チャンネル

●参考動画 くり栗チャンネル

注目記事

MOVIE

TOP