大型ヒラマサを狙って獲る! そんな意気込みを形にできるのがヒラマサのキャスティングゲーム。水面を走るルアーを派手な飛沫をあげて襲うヒラマサは、ヒットすると凄まじいパワーとスピードでロッドを絞り込む。圧倒的な野性に出会えるヒラマサのキャスティングゲーム、その全体像を紹介します。
この記事を作った人ヤップ!編集部
ヤップ!でオフショア情報を発信する人たち。編集長の大川直を中心にそれぞれに得意な分野について執筆&撮影して投稿。信頼できる情報を分かりやすく伝える! をモットーに活動中。
世界記録のヒラマサもキャスティングでキャッチされた!
ヒラマサはオフショアキャスティングのターゲットのなかでも非常に人気の高いターゲットのひとつです。
シーズンは周年。フィールドによってバラつきはありますが、春、そして秋から冬にかけてにハイシーズンを迎えるフィールドが多いです。
キャスティングでヒットしてくるヒラマサはジギングに比べると良型が揃う傾向があり、大型キャッチの確率も高いのが魅力でもあります。
ヒットしてくるヒラマサは小さくとも5~6キロということが多く、10キロオーバーはもちろん、20キロクラスの実績も少なくありません。
過去、外房沖では49.5キロという大型ヒラマサがキャスティングでキャッチされており、これはワールドレコードにもなったビッグフィッシュです。
関東では外房沖、関西以西では玄界灘が代表的なヒラマサキャスティングフィールド。この2つのフィールドは多くのアングラーが屈指のスプリンターを求めて通い詰める激戦区でもあります。
ロッド&リールはフィールドに合わせて適切に使い分ける
ヒラマサキャスティングゲーム、スピニングタックルの使用が一般的です。フィールドやシーズン、ポイントや状況によってヒットしてくるヒラマサのサイズに違いが出てくるので、何セットかを使い分けていくのが基本です。
ロッドは8フィート前後のヒラマサキャスティング用から選択します。
ルアーの操作性に長けた柔軟なティップ、ヒラマサのパワーをしっかり受け止めてファイトを展開できる強靭なバットを備えていることがセレクトの際に重視するポイントです。
張りが強すぎるタイプはキャスト、ファイトともに上級者向け。初心者には難しくなりがちなので、全体で曲がるタイプのものを選ぶのがおすすめです。
ラインクラスはPE4号~8号に対応できるもの、キャストウエイトの最大表示が80グラムから150グラムに対応できるものを選ぶとよいでしょう。
外房沖ではPE4号、6号程度のラインクラスが標準、玄界灘ではPE6号、8号が標準となります。アングラーの体力やフィールドの状況によっても使いやすいパワークラスは異なってくるので、よく吟味して適切なものを選びましょう。
アンダーハンドキャストがレギュレーションとなっている船が多い外房沖では、釣り座によっては7フィート台のショートレングスロッドが使いやすいでしょう。
また、玄界灘では浅いポイントで20キロオーバーのヒラマサに照準を絞って攻略するパターンもあり、こうしたときには確実なキャッチのためにPE10号タックルを握るアングラーもいます。
フィールドやポイントの特徴によって適切なタックルをセレクトする必要があることを覚えておきましょう。
リールは8000番から14000番のスピニングリールを使用します。
巻き上げの軽さ、巻き心地の滑らかさ、ドラグ性能、剛性、耐久性、防水性能など、リールの性能は価格に比例すると考えれば、ほぼ間違いはないでしょう。
予算の許す範囲で良いもの=高級なものを選んでおくと、快適かつ長期間使用することができます。
ギア比は最低でもHG、設定があるモデルではXGモデルを選ぶとよいでしょう。基本的にヒラマサキャスティングでは風を背にしてキャストします。船とルアーの位置がどんどん近くなっていく状況が多く、潮の流れと船の流れる方向が逆であればなおさらルアーが近づくスピードが速くなり、アクションさせるのが難しくなります。
巻き上げスピードの遅いリールでは上手くルアーを操作できないこともあります。回収動作でも、ファイトの面でも巻き取りのスピードの速いリールは有利となることをおぼえて おきましょう。
ラインは使える範囲でできるだけ太いものを選ぶ
メインラインのPEはロッドのパワークラスに合わせて4号から8号を使用します。
しなやかでありながら適度な張りがあり、ガイドに絡みにくいオフショアキャスティング用のPEラインが理想的です。
リーダーはしなやかでショック吸収性が高いナイロン製の60ポンドから150ポンドをメインラインに合わせてセットします。
メインラインがPE4号であれば60ポンド、6号であれば80から100ポンド、8号であれば120から150ポンド、といった組み合わせがよいでしょう。
リーダーの長さはロッドにリールをセット、ルアーを結んでキャストするときのタラシの長さを確保した状態で、リールのスプールに1回転くらいリーダーを巻き込んだ状態がベスト。
メインラインであるPEを指にかけてキャストを繰り返すと摩擦熱による劣化が進むので注意が必要です。
リーダーを指に掛けてキャストすればメインラインの劣化を防ぐことができますが、あまり巻き込み過ぎるとキャスト時のライントラブルが多くなるので注意が必要です。スプールに1回転、がベストでしょう。
リーダーとルアーの接続には溶接リングやスイベルとスプリットリングを組み合わせた、コンビリングの使用がおすすめです。
交換が容易なスナップは便利ですが、強度が足りなかったり、構造上、意外な状況で外れたりするので、ヒラマサのキャスティングゲームでは使用を避けるのが賢明。
コンビリングも強度や品質をよく吟味し、ルアーサイズに合ったものを選択することが大切です。
メインルアーはダイビングペンシル。ポッパーやシンペンも使える
ルアーはフローティングタイプのダイビングペンシルがメインとなります。
サイズは13センチから24センチ程度。フィールドによっても異なりますが、最も多用するのは16センチから20センチ、重さは50グラムから130グラム程度が目安となります。
ひと口にダイビングペンシルといっても多種多彩、それぞれに特徴があります。
飛行姿勢がよく飛距離が出せること、水面から飛び出しにくいこと、水中での泳ぎがよいものと、などのアクションの安定性を重視してセレクトするとよいでしょう。
船長におすすめのルアーを訊いてみるのも確実な方法です。
ポッパーも活躍するルアーです。サイズは15センチから20センチほど。重さは50グラムから100グラムが目安となります。
飛沫と音、泡でのアピール力が大きいので、ダイビングペンシルではアピールが足りないと感じるラフコンディションなどで威力を発揮するルアーです。潮波が高いポイントなどでも安定してアピールできる点も特長です。
GTゲームなどに使用する広口タイプのポッパーより、マグロに効果的な小口タイプのほうが効果的な傾向があるので覚えておくとよいでしょう。
使用する割合はそれほど高くはありませんが、ナブラ撃ちやベイトフィッシュがとても小さいときなどに活躍するのがシンキングタイプのペンシルベイトです。
40グラムから60グラムのものを数本でよいので持っていると安心できるでしょう。シンキングペンシルと同様にヘビーシンキングミノーも効果的なルアーです。
ルアーのカラー、フックのセッティングは好みで選べばOK
ルアーのカラーは、イワシやトビウオなどを模したナチュラル系を基本に揃えるのがセオリー。
ダイビングペンシルやポッパーなどのトップウォータープラグルアーではオレンジやピンクなどをバック(背)に使った、アングラーから見やすいものを使うのもおすすめです。
波が高かったり、風が強かったりするようなラフコンディションではルアーを見失いがちです。視認性のよいカラーはルアー自体の存在や軌道を確認しやすいなど、利点も多いカラーです。
フックの選択肢としてはトレブルフックとシングルフック、2つがあります。
トレブルフックはフッキング率こそ高いものの、スレ掛かりや浅掛かりなどを起こしやすくバラシの原因となることもあります。魚体に傷をつけやすいフックとも言えるのでリリースを前提に楽しむ場合は、使用を避けるのもよいでしょう。
シングルフックはトレブルフックに比べフッキング率は低下するものの、トレブルフックよりも大型のフックを使えるので、一度フッキングすればバラしにくいという点が特長。
シングルフックを1本ではなく2本、抱き合わせるようにセットする方法もあります。このスタイルなら、シングルフック1本よりフッキング率アップが期待できます。
どのスタイルのフックセッティングを選ぶかはアングラー次第。いずれを選ぶ場合でも、できればバーブレスフックにすることをおすすめします。
自分や他の乗船者にフックが刺さった場合でも、被害を最小限に抑えることができるからです。魚体にも必要以上の傷をつけることがありません。
トレブルフック、シングルフックのいずれを使用する場合でもルアーサイズに合ったフックを選んでセットすることが大切です。
適合するサイズのフックのなかで大小や重さを使い分けると、ルアーアクションを変えることも可能となります。小技として覚えておくとよいでしょう。
ルアーのボディ素材にはウッド製のものと樹脂製のものがあります。ウッド製のものは希少価値が高く、使っていて釣れる気分もアップするが、高価なものが多く、耐久性はいまひとつ。最初のうちは入手しやすく、比較的安価で丈夫な樹脂製のものを使うのがおすすめです。
キャスティングは飛距離だけでなく精度も重要
ヒラマサは基本的に根(瀬)の周りに定位したり、根の周りをぐるぐると回遊しています。船長はここぞと選んだ根に対し、風と潮の流れの向き、強さを考慮して船を流していきます。
アングラーは船が流れている間、ルアーを繰り返しキャストしてアプローチするのが基本スタイル。
キャスティングはタラシを取ってしっかりテイクバックするオーバーヘッドキャストが基本。キャストをするごとに周囲の安全を確認することが大切です。
外房沖のようにオーバーヘッドキャストを禁止している船もある。レギュレーションに従って安全に釣りを楽しむことを優先しましょう。
キャストは飛距離も重要ですが、精度も大切です。
「(船の先端を時計板の12時として)2時の方向、60メートルくらいにキャストしてください」という詳細なアナウンスが出ることもあります。
こうしたときに指示通りにキャストできるアングラーと出来ないアングラーでは釣果に大きな差が生まれます。
できるだけ上手くキャストできる技術を身に付けましょう。そのためには練習あるのみ。不安な方は港や砂浜などでしっかり練習しておくことをおすすめします。
根周りについたヒラマサを狙うだけでなく、ベイトフィッシュなどを追ってナブラになっていたり、中層に定位しているヒラマサを狙ったりする場合もあります。
ナブラになっている場合は、その周囲、できれば進行方向を横切るようにキャスト&リトリーブが出来ればヒットの確率はグッとアップします。
着水後、すぐにルアーにアクションを与えられるように、着水するまでの間にフェザーリング(サミング)を行って、余分な糸フケを可能な限り取っておくことも大切なテクニックです。
ルアーが着水してすぐにヒット! ということは珍しくありません。着水時に糸フケが出ていてルアーが動き出すまでに時間が掛かるとヒラマサにルアーを見切られてしまうリスクがアップします。ときにはただの浮遊物と見なされてしまうので、余分な糸フケは出さないよう注意しましょう。
ルアーの特性にあったアクションパターンを試していく
ダイビングペンシル、ポッパーの場合は、ジャーク&ジャークが基本アクションとなります。
ジャーク&ジャークとはロッドをルアーの方に向けてから下、もしくは横へ振ってジャーク、引いた分のラインをリール巻いて回収という動作を繰りかえすアクションパターンです。
ロング、ショートとジャークの幅を変えたり、スピードを変えたり、もしくはジャーク&ポーズという感じで、少し止める演出法が効果的な場合もあります。
強くジャークしすぎて激しくルアーが水面を転がってしまったり、飛んでしまったりするとヒット率が下がってしまうので注意しましょう。
丁寧にジャークすることが大切です。ダイビングペンシルに関しては着水後、ひたすら巻き続けるノンストップジャークというアクションパターンが有効な場合もあります。
シンキングペンシルはただ巻きか軽いトゥイッチをしながら巻いてくるのが基本パターン。イワシがダンゴになっているような状況では、ダンゴの近くにキャストし、フォールさせても効果的だ。
大型ヒラマサはヒット直後のゴリ巻きがキャッチの秘訣
横っ飛びにルアーを引っ手繰ったり、周囲の水ごと巻き込むように吸い込んだり、水中をルアーが泳いでいるときにアタックしてきたり、とバイトの現れ方はさまざまです。
いずれの場合でもしっかり糸フケを巻き取ってから1~2回ロッドをあおってアワせるのが基本となる。
適当な水深のポイントで、適正なタックルを使用し、適切なドラグ設定を行っていれば、10キロ以下のヒラマサに根ズレされることはあまり起こりません。相手に主導権を握られて振り回されながらでも、なんとかキャッチできるはずです。
ヒラマサのパワーを全身で感じながらなんとかキャッチ、というのも悪くはないでしょう。ちなみに6号、8号タックルを使用する場合でのドラグの初期設定は7~8キロが適正な数値の目安となります。
問題は大型のヒラマサや浅場でヒットした場合です。上手にやり取りしなければ、根に擦れてラインブレイクされたり、海底の海藻に絡みつかれてキャッチが難しくなったりします。
水深20メートルのポイントでも60メートルのキャスト後すぐにヒットし、ヒラマサがすぐに真下に潜ったら十分に根まで到達してしまいます。
適正なタックルを使用し、適切なドラグ設定を行っていても根ズレのリスクが生じることになります。
これを防ぐためにはヒット直後にとにかくゴリ巻きして少しでもラインを回収、ヒラマサを寄せてくること。ヒット直後は相手もランの姿勢が整わず寄せられることが多い。このときに少しでもラインを回収して根から引き離しておけば、直後に来るファーストランの距離を稼ぐことが可能になります。
大型ヒラマサのファーストランを止めることは出来ません。無理に止めるとラインブレイクやロッドの破損を招いてしまいます。
できることは少しでもランの距離を短くすること。これが出来ずに根まで到達されてしまったらヒラマサの勝ち、到達するまでに止まったらアングラーの(ひとまずの)勝ち、とも言えます。
ドラグを滑らせラインを放出しながらのファイトとなるが、ときにはハンドドラグを併用して凌ぐことも大切。
このときグッとスプールを押さえて込んでしまうのは禁物。少しでもスプールが回転すれば、ラインブレイクを防ぐことは可能だ。相手が止まったらとにかくグイグイと巻いて寄せてくる。
大型であればセカンドラン、サードランと抵抗するが、ファーストランほどのパワーやスピードはない。これを繰り返して船縁に寄せたら、最後の力を振り絞ってネットまで誘導して終了、となる。
実際の船上ではヒットさせた釣り座だけでファイトすることが困難な場合もある。たとえばミヨシでヒットさせてもヒラマサがトモの方へと走れば、トモの方までダッシュする必要があります。
風が強い状況で大型ヒラマサがヒットした場合、風下側の舷でランディングを試みると船下に入られてしまいがち。船底に擦られてラインブレイクしてしまう危険性が増してしまうので、タイミングを見て風上側の舷に移動することも大切。
相手の動きに対応し臨機応変に行動することが重要だ。とはいえ、なかなか冷静には行動できない。あらかじめシミュレーションをしておくと、いざというときに船長から指示されても落ち着いてファイトを展開できるはず。ぜひ予習しておくことをおすすめする。
コメント